東京スポーツ2020.12.20:関越道立ち往生は人災だ!米国より100年遅い高速道路の豪雪対策より

今季最強の寒気による大雪で発生した新潟、群馬県境付近の関越自動車道の約2100台による立ち往生は、交通対策の“脆弱さ”を改めて露呈した。18日午後10時15分ごろ、約52時間を経て解消した今回の立ち往生。雪は毎年降るものなのに、高速道路が長時間ストップするとはどうなっているのか。専門家によると、日本の高速の除雪対策は米国よりも100年遅れているという。

 東日本高速によると、立ち往生は16日午後6時ごろ始まり、上り線の塩沢石打サービスエリア付近で大型車が動けなくなった。上り線の小出インターチェンジ(IC)―塩沢石打ICの約30キロのうち、六日町IC(いずれも新潟)を挟んだ区間で18日まで続いていた。現在通行止めになっている小出IC―月夜野IC(群馬)の上下線を19日朝に再開させる方針。

 上り線は自衛隊員を含む約700人で作業し、六日町ICなど5か所から車を外へ誘導した。

 立ち往生は上下線で最大時約2100台に及んだ。東日本高速は18日午前7時時点で上り線に約70台が残されていると説明したが、その後撤回。正午に約1000台を確認した。小畠徹社長は東京都内で記者会見し謝罪。「チェックが不十分だった」としている。

 立ち往生騒動について、防災に詳しい警鐘作家の濱野成秋氏はこう語る。

「日本の除雪対策は100年遅れている。かつてニューヨーク州北部の大都市バファローの州立大で教鞭を執っていたことがあるが、大雪対策の徹底ぶりには驚嘆した」

 バファローでは、真夏の日差しがやや弱まると、数週間で大雪が来る。秋口になると、消防がせわしなく移動を始めるという。

「一夜にして2メートルの積雪だから、除雪車が何百台とガレージから出されて配備される。早朝、どの道路もディーゼル音を聞いて目覚める。いよいよ降り出したなと窓を開けると公道も私道も一斉に雪かきである。全部、市に雇われた除雪車がやってくれる。おかげで個人個人の車生活には何の支障もない」(同)

 日本では私道公道の区別なく、大雪の朝は雪かきに追われる。そんな情景は俳句の季題にはいいだろうが、雪は危険性をはらむ。

 濱野氏は「日本のハイウエーがなぜ大雪でストップするか。今回のドカ雪で、日本第1の幹線道路である関越道が大雪で何千台と車をストップさせても、除雪システムのないことを問題にする者は一人もいなかった。今回の大渋滞は自然災害だと思っているらしいが、事前に除雪車が配備されるシステムの欠落が招いた人災だという識者も出なかったのは残念」と語る。

 ニューヨーク州で万が一、こんな現象が出れば、ハイウエー当局はその任務不履行の罪で、責任を取らされるのだという。

「なぜなら雪が車の前後から積もりだすと、あっという間に2メートルに達し、車の排ガスで車内の人々は一酸化炭素中毒で死亡する危険性が極めて高いからだ。ニューヨーク州では今ではまれに見る事故となったが、降雪では絶対南へ走るなと言われる。なぜなら南部までたどり着く前に山間部で立ち往生して凍死するからだ」と濱野氏。

 実際、新潟県南魚沼市の消防によると18日午後6時時点で、立ち往生した車で待機中に体調不良などを訴えた30~60代の男女4人が病院に搬送された。

 濱野氏は「日本では関越のような幹線道路で雪による車の立ち往生現象が出ても、生命に及ぼす危険を与えたかどで、当局の責任者が罰せられることはない。運転手さんに温かい湯茶の接待をして美談となるが、それは車中凍死やガス中毒死がなかったから美談になっただけのこと。それを美風としてテレビのニュースとしているようでは、道路行政がまだまだ発展途上の国だと言われても仕方があるまい」と指摘している。