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夏の通り雨  北見 薫   2023.8.7
 
心潤こころうるおしてくれ。
この枯渇した心の渇きを
俺を満たす夏の通り雨様よ。
雨空に向けてつらを向けてると、
大粒の雨が痛い。
俺はそいつに混ぜて
涙ぼろぼろ。
 
俺みたいに悲哀に満ちた運命でも
雨は容赦しない。心を癒さないから
その荒っぽさがいい
心穏やかに居たいなんて思うもんか。
 
街路樹は百日紅さるすべりのピンクで満開
華やかさで俺の心を揺さぶりよる。
気がついたら、さっきまでの通り雨はやんで
白い雲が手前勝手に流れてやがる。
あの雨粒を何処へ運んでいく気だ
俺の心をもてあそびやがって。
Man is mortal  北見 薫   2023.8.3
 
ある日、俺は考えた、
自分の所有物なんて何もないんじゃないかと。
そう思えたら、なんて気が楽なんだろう
だって三途の川を渡るとき、まさか
シルバーのポルシェ、持ってけねえじゃねえか。
 
人はいつかは死ぬるもの。誰だって死ぬる。
悲しいけど、生き物だから、しゃあないね。
Man is mortal. 人はもれなく死ぬる物モータル
そう考えたらポルシェなんかおいてけぼりさ。
 
欲はよくも悪くも
ほどほどでいい。
この世には身體がただ一つ。
沢山のメモリーを持て余しても
いつかその日が来たら、俺は
幸せで、あたたかい記憶だけを腰紐にぶらさげて
黄泉めざして、ぎっちら、ぎっちら…
櫂を漕ぐさ、ニッポン人だからな、俺も。
暗い運命さだめ  北見 薫   2023.8.1
 
日光街道の杉の並木道
夜明けの蒼き森を抜けて
あなたと共に走り抜けた
まだ長くこの道は続くから
ずっと行く先だけを見つめる
神の住む国は森の果てにあるという
閉塞気味で呼吸し辛い
僕の魂は敏感にそれを感じているから。
 
同じ時を過ごす運命さだめ
暗い運命は二人で分けてと、詩人は言った
共に暮らそう昔の儘でと
それはままならぬ恋の旅路だと知っていて
幻にしたくないからなんだろう
固くきつく指と指をからませ
君は無言のままで言う。
俺の葛藤  北見 薫   2023.7.30
 
これを言ったら
こう返される
 
ああ言ったら
ああ返されそうで
 
何も言えなくなった
俺の心
葛藤ばかりの自分  北見 薫   2023.7.31
 
誰かに届けたい自分の真心
十年もの年月、床に伏せてしまった
人にしてもらうばかりの人生だった
いったいこんな人間に何ができるのか
不甲斐なくて情けない葛藤ばかり
 
手のひらをじっと見つめて固く握りしめると
気がつけばもうこんな年になっていた
焦りだけが胸によぎる
その時バタバタとはばたく鳥は
ムクドリだ
 
そんなにも慌ててどこへ行く
この私を置き去りにして
メタセコイヤの森の果てへ消えていった
ヘリコプターが私を現実界へと呼び覚ます
再び静寂に戻った午後の緑地