目黒川情話  奈良みづゑ   2024.1.17
 
桜吹雪の目黒川
今年もつむぎに半幅帯で
川面に映す襟足視れば
うす桃色の花びら一つ
残照のこりび照らす女肌
 
春の嵐に揺れて舞う
東山橋ぼんぼり灯り
いついつまでも悲しみひいて
わが身遊ぶや喜ぶや
こぼす涙も嘆き橋
 
びんのほつれに細指そえて
華の乱れに吐息をもらす
ふと耳許で囁くは
ああなつかしやまぼろしか
忘れもしない声の主
 
嘘ならいらない、もういらないわ
気まぐれ貴方と つきあうなんて
嘘よ、うそうそ、あたしを棄てて
青きちまきに走ったあなた
愛してる? 愛してるから帰って来たの?