詩は知らんぷり  高鳥奈緒   2023.9.14
 
ある日、ぼんやりと考えた
自分のモノなんて何もないんじゃないかと
そう思えてきたら何て気楽なことだろって
 
肉は死んでも詩歌は生きてやがる
川を渡るにも
大きな荷物なんて持っては行けない
詩歌は最初からその舟に乗り込まない
 
いつかはすべての人は死ぬ
悲しいけれど生き物
もれなく自分もね
そう考えたら卑しい欲はいらない
お前さんたち、勝手に三途の川わたりなさい、って
俺の詩たちはいってやがる
 
欲はよくも悪くも
ほどほどに、がいいのかなって
あの世には身体一つで
沢山のメモリーだけ持ってくよ
いつかその日が来るのなら
 
欲はよくも悪くも
ほどほどに
幸せなあたたかい記憶だけ残したいな
 
詩歌は先に去った肉を悲しんでなんかいない
こいつは冷酷だ、一緒に死んでくれといっても
知らんぷり。
今日も知らんぷり。
明日も知らんぷり。