濱野成秋の世論正論⑶
 
 大腸直腸の手術は迂闊にやらない   警鐘作家 濱野成秋
 
  ドクターを裏切れなかった谷村新司
 
  マスコミは医学界を冷静に取材しなさい
 
 惜しい人を亡くした。谷村新司君はまだ70代。人生熟成期がこれからだというのに。君は優しかった、実に相手の好意を裏切れない人物だった。それが芸能界で評判で、心の籠った彼の歌もそこから出ていた。思い出すと惜しまれてならない。人の助言を大事にし、信じやすく、従ってきて70代に。そんな君がまだ70代なのに医者の手術で寝たきりになり、死んでいった。そんな例を僕はほかにも知っている。
 筆者ももう少しで同じ運命をたどるところだった。悩み切った挙句、手術直前でキャンセルした。だから、まだ生きている。
 手術に反対したのは妻だった。
 「春子おばあちゃまも、入院前はぴんぴんしてたのに」と妻。「術後、治りが悪くて寝たきり。結局、その病院で亡くなったじゃないの…」
 言われてみるとそのとおりだ。うんちがゴリゴリ固まって出ない。浣腸も下剤も役立たず、それが頂点に達すると、尿道も圧迫されて、おしっこも出なくなって腹はパンパン。救急車で担ぎ込まれ入院するなり、尿道から管を入れて排尿はしてくれるけれども、宿便を出す作業士はいない。ドクターは排便作業はやらない。苦しんで自分自身で出す。この繰り返しの後、「切開手術のあとはすっきり治るよ」と言われると、やってください、となる。
 だが場所が場所だけに、切って縫ったところに新たに固いウンチが来ると、また出血で、その繰り返しで治りがきわめて遅い。谷村君はステージがあるからと無理して…元首相の安部さんもそれで苦しんだ。誰が悪いのではない。70代の腸手術は治りが悪いから、苦労する。
 それを筆者はどう脱したか。常日頃、便を柔らかくする「酸化マグネシウム」と整腸剤「ミヤBM錠」を食後すぐに忘れずに飲み、それでも詰まったかなと思ったら、「ボラザG軟膏」を肛門に注入して授業の教室に駆け付ける…という具合で、あれから十数年、救急車も呼ばずにやれている。
 谷村君、君はいい奴だった。その話ばかりのマスコミだが、なんで死んだか、彼はドクターとのアポを裏切らなかった。筆者は裏切った、むろん、詫びて詫びて、「トシで術後の治りに全く持って自信がないので…」と平謝りで。君もそうなさればよかった。結局、自分の身体は自己責任で判断するしかない、時にはドクターの判断に逆らっても生きていく。谷村新司君のキャラは最高だったし今となっては取り返しがつかないが、同病相哀れむで参考にしてくれ。