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春を待つ  高鳥奈緒   2023.12.2
 
貴方に嫌われたくなくて
ずっと良い子を演じてしまった
本当は、もっと言いたい事あったのに
本当の自分を出したら
きっと貴方に嫌われそうで怖かった
 
気持ちが邪魔をしてギクシャク
気持ちが誤解を生んでギクシャク
恋も愛も実らないうちに、
ずっと同じ場所で春を待つうちに
貴方を待っている夢は消えて行く
 
貴方は笑顔で現れて私に手を振るの
そして私の名前を呼んでいるから
嬉しくて頬に涙が流れて落ちた時
目覚めて知る悲しい現実
言葉はいつだって溢れていたのよ
 
 
木の葉が一枚風に舞い
地面に落ちる瞬間も
敏感に見逃せない貴方の言葉や仕草まで
傷ついて傷つけた心は
また傷つくのが怖くて傷つけてしまった
 
「この想いはいずこへ・・・」もう一度愛を温めて
心は乾いた大地のように恵みの雨を望んでいるわ
期待して空ばかり眺めているの
それは春を待つ気持ちみたいに
待てば来ぬ雨、降らぬ雨に憎い空
こんなに冷たい冬はない
こんなに冷たい貴方もいない
ただただ、春を待つ
わたしの心は寒い空
愛ゆえに  高鳥奈緒   2023.11.30
 
ひとつの恋が終わると
どんな素敵に輝いた日々も
人は忘れてしまうのかな
自然と徐々に薄れて消えるの?
だからこそ人は立ち直り
やがて前にも歩き出せるのかも
 
良い記憶より悪い記憶が上書きされるのはなぜ
それは傷つく自分を守る唯一の手段なのね
悲しみが記憶にかさなると、まるで被害者のようだけど
それで強くなれるのだ、決して自分だけではないと気づいて
僅かな時間でも確かな愛があったことを
忘れないで忘れたくはないと考えて
 
すべてが消えてしまうのは別れよりも悲しすぎる
誰よりも本気で愛した貴方だから
こんな結末とわかっていても
まだ貴方を憎みたくない恨みたくないのよ
この愛を消せない愛を消さないで
 
 
綺麗ごとじゃなく苦しいけれど
時間をかけて貴方という執着を手放すわ
静かに身を引くということも
一つの愛だとわかったのよ
今までの大切な時間を水の泡にしたくない
自分に誇らしく堂々としていたいの
 
そして毅然と美しく終わらせたいのよ
何と言われようがいいわ
私にとってかけがえのない愛だったという事実
愛は、やがて夜空で光る星になるの
輝く星は、貴方という名の真冬の星座
オリオンに貴方のお幸せを祈って・・・
それは愛ゆえに
初雪  高鳥奈緒   2023.11.15
 
静かな冬の夜
街灯の下 チラリ チラチラ チラリと舞う
降り積もる雪は初雪
寒さも シン シン シンシンと底冷え
 
言葉にできなくて
車の窓ガラスに「すき」の文字を書いてみたけれど
誰に届くの この想い
誰も知らない奈緒の気持ち
 
切なくて 切ないのよ
会いたくて 会えないのよ
声が聞きたいけれど 聞こえないわ
叶わぬ恋路、心は臆病にも震えている
 
でもこのままでいい このままで
全てを失うのが怖いから
この純白な真珠のよう初雪みたいに
神聖にそっとそっと降り積もるから
 
「すき」の文字も、やがて初雪に
埋もれ消えたけれど
奈緒はいまでも、彼方を・・・
お慕い申し上げます。
肉じゃが  高鳥奈緒   2023.11.17
 
肉じゃが食べたいといわれて
作ったものの
無言で食べているから
「どう?おいしいかしら」とたずねると
「うん。おいしい」とオウム返しだけ
いつだって言葉は少なげだけど
作る私の心なんか関心もない返事に、もやもや。
 
わたしは泥臭いジャガイモのように
あなたには当ったり前なのね
もっと褒めてよ
ちゃんと作ったのに
心は不満でいっぱいなのに
 
あら?ふとテーブルのお皿をよくみたら
あんなに沢山の肉じゃが
あっという間に
残さずに食べているじゃないの
 
なんだ、やっぱり良かった
無器用な表情でテレビを見るあなたの横顔
わたしの方はおのろけ気分だと、
判っているのかな、そのテレビを観る目は
失恋詩
独りぼっちのワイングラス  高鳥奈緒   2023.11.11
 
吹き抜ける風は秋の香り
小径に舞う色とりどりの枯葉たち
若葉だった木漏れ日の小径を
あなたと一緒にぐい、ぐい、ぐい
漕いだわ、自転車、ぐい、ぐい、ぐい。
 
小径は若草 自転車はタンデム
耳もとに唇よせて「大好きよ」と小声で言ってやったら
「きこえないよ!」と振り返る
モミジみたいな真っ赤な耳もとに
また言わせるつもり? にくい奴
もう言わないわよ、言ってやるもんか。
奥さん泣かすな、にくい奴
ぐい、ぐい、ぐい
アンティークショップで自転車とめて
買ったわね、二つ、青いワイングラスを
これって、思い出グラス?
ふと思ったら目が遭った
その日の自分が消えないで
握りなおすワイングラス
独りぼっちで可哀そう。
失恋詩
冬のアフタヌーンティー  高鳥奈緒   2023.11.11
 
西陽さす冬の午後
あなたの部屋
お揃いのマグカップは
幸せのウエッジウッド
紅茶を入れると
あたたかいマグカップ
 
手のひらでつつんで
冬のアフタヌーンティー
楽しいお喋りして
あなたは私を笑わせる天才
お腹が痛いほど笑った
こんなに好きになるなんて思わなかった
 
瞳の優しさは心の奥まで見られそうで
少し目をそらした夕暮れ迫る窓ガラス
忘れられない穏やかな時間
あの日あの時に帰りたい
冬が来ると思い出すのよ
あなたの部屋でのアフタヌーンティー