失恋詩
独りぼっちのワイングラス  高鳥奈緒   2023.11.11
 
吹き抜ける風は秋の香り
小径に舞う色とりどりの枯葉たち
若葉だった木漏れ日の小径を
あなたと一緒にぐい、ぐい、ぐい
漕いだわ、自転車、ぐい、ぐい、ぐい。
 
小径は若草 自転車はタンデム
耳もとに唇よせて「大好きよ」と小声で言ってやったら
「きこえないよ!」と振り返る
モミジみたいな真っ赤な耳もとに
また言わせるつもり? にくい奴
もう言わないわよ、言ってやるもんか。
奥さん泣かすな、にくい奴
ぐい、ぐい、ぐい
アンティークショップで自転車とめて
買ったわね、二つ、青いワイングラスを
これって、思い出グラス?
ふと思ったら目が遭った
その日の自分が消えないで
握りなおすワイングラス
独りぼっちで可哀そう。
失恋詩
冬のアフタヌーンティー  高鳥奈緒   2023.11.11
 
西陽さす冬の午後
あなたの部屋
お揃いのマグカップは
幸せのウエッジウッド
紅茶を入れると
あたたかいマグカップ
 
手のひらでつつんで
冬のアフタヌーンティー
楽しいお喋りして
あなたは私を笑わせる天才
お腹が痛いほど笑った
こんなに好きになるなんて思わなかった
 
瞳の優しさは心の奥まで見られそうで
少し目をそらした夕暮れ迫る窓ガラス
忘れられない穏やかな時間
あの日あの時に帰りたい
冬が来ると思い出すのよ
あなたの部屋でのアフタヌーンティー