病床十題  濱野成秋   2024.2.22
 
 心臓にやや圧迫感あり。近隣の病院へ。直ちに手術を言い渡され戸惑いながら入院となる。この病床、果たして真の深層はいかに。その真相知れずして、かかる古びた病棟にて切開手術を宣告されることの不安感は募りて止まぬ。
 
  ふと問ひし院に囚われこの三日
     生気も消え失せ死出の旅路か
 
  ごうごうと唸る天井硬ベッド
     明かり真上で深夜も眠れず
 
  わが命父母に貰ひし余生まで
     総て奪ふかそが営みか
 
  いや出さぬ退院などは在り得ぬと
     睨む医師の眼いかに読むべき
 
  死の重さ生きたる日々を知りもせず
     画像の解析嘘かまことか 
 
 
 
  古き器具古きトイレに尿瓶もて
     点滴ゆるゆる哀弱ひどし
 
  コレステ除去して血管拡張
     糖分高しで衰弱はげし
 
  院脱しよろめく足でスーパーへ
     ウナギ食へれば力もつくか
 
  治療室肉體処理のゴミ捨て場
     友ら忘るな臓器うんぬん
 
  甘いジャム糖分でんぷん盛だくさん
     日々憔悴し切開近しか
 
 納得ずくの入院であれば我が運命さだめと諦めもするが、偶発入院ではとうてい我慢ならず、数日後、セカンド・オピニオンの口上にて退院できた。目下都内の最新設備の院にて、脈拍測定も何もかも正常にて検査中。