シンポジウム資料 開催:初芝体育館 2021.5.9
地元出身警鐘作家 濱野成秋
☆八ヶ岳構想で出発した政令都市堺市はこれで躍進する
[筆者略歴]登美丘中学4期生。慶大アメリカ文学専攻卒。東大アメリカ研究所研究員。東北大助教授を経てニューヨーク州立大客員教授。日本女子大大学院教授。早大・青学・一橋大講師、京都外大大学院教授。警鐘作家としてTVや新聞論評。著書編著30点。主要著書『日朝、もし戦えば』(中央公論社)、『日本の、次の戦争』(ゴマブックス、電子書籍キンドル)、『ユダヤ系アメリカ文学の出発』(研究社)、『愚劣少年法』(中公)、『ビーライフ!白亜館物語』(中公)、短編集『別れる季節』ほか文芸選書5点ほか学術書多し。現在ネット検索できる『オンライン万葉集』を主宰し、「日本の和の心」を世界に発信中。登美丘中学創立50周年記念式典卒業生総代。
[開催目的]今を去る15年前の2006年4月、堺市は政令指定都市に移行しましたが、当時、東区の中心であった登美丘町北野田の商店街はシャッター通りとなり、疲弊の極にありました。私共と町内会連合会は市民の意向を重視して大規模再開発を提起し、市政も協力体制にあって4本の高層ビルを建設でき、文化会館を始め多くの施設を導入できました。あれから早くも15年が経過。果たして現在も活性化が継続中か? あるいは停滞が著しいのか。その原因は何なのか?
Ⅰ文化会館の活用で強力な求心力を持とう
[経緯概説]今までの15年間の前半(市民活動によるもの、2007~2015)と後半(行政OBの運営によるもの、2016~2021)に分けてルックバックしてみよう。
⑴15年前の文化産業構想:池崎守氏と筆者がペンクラブの早乙女貢氏、越智道夫氏らを招聘して堺区でシンポジウムを開催。堺市長も積極的に同調されて、市政を「富士山構想」から「八ヶ岳構想」へ。東区を文化村の中核都市と位置づけた。これは東京都渋谷区のBunkamura the Museum に匹敵する。発信型イコール集中型。「遠心力」centrifugal force→「求心力」centripetal force
⑵「界隈」は消滅しても住民の団結は続いた:北野田シャッター通りは高層ビル4本の建築へ。地蔵さんはじめ「界隈」が消滅する無念さはあったが、市民の生活を支える施設をもって町全体の崩壊は救われ、近代化に変身できたとき、市民の大活躍が復活した。
⑶東区の文化会館・図書館のオープン:前期つまり市民の自主運営・自主企画が次々成功。NHK大河ドラマ主演中の伝統狂言宗家和泉元彌氏が登美丘中学創立50周年祝賀行事に。文化会館開設後、FM局が開局。カフェの賑わい顕著。ところが後期、市民のNPOから旧市役所OBによる運営に移行。貸舞台・貸ホールとなり、館内は灯が消えた如し。
提言:地元住民が企画運営し市の財政的予算を得て、採算・損益分岐点で不可能とならぬ運営で次々と発信、東区の求心力を。また登美中・登美高の大活躍にみるように、吹奏楽部・ダンス部の目覚ましい活躍を堺の文化村の宝にして文化活動の未来を担う人材となって欲しい。
Ⅱ日本初「世界防災センター」World Anti-disaster Centerの開設を堺市東区で実現しよう
未発達の法整備:コロナ禍でWHOがクローズアップされているが、日本はバイオだけでなく、自然災害や原発公害など、多様な問題を抱えている。ハイウエイの大雪対策一つ取ってみても、我が国は、いまだ十分な組織化がなされないままである。コロナ対策もワクチンづくりも遅々として進まず、急場しのぎの施設で外国製ワクチンに頼る始末。特に遅れが目立つのは、先進国では当たり前となっている産官学協同体が機能する組織づくりがないこと。法整備がなく、国会においてでさえ、的確な議員立法として上程するに至っていない。標記センターは法整備の在り方を含め、世界の最新情報で対応策を政府に提示できます。
筆者の阪神淡路:阪神淡路大震災のさい夙川にあった友人宅の救出に向かい、知事部局と協議の上、時の自治大臣の野中広務氏と永田町の大臣室で協議し、6800億円の緊急支援を取り付けた。これは成功したが、二重ローンの問題をはじめ、読売新聞と日赤本社の協力で1兆円基金創設を進めたが、損保事業とのバッティングで省内が難航。基金制度だけでは自然災害抑止は困難となった。標記センターは災害に伴う財政問題の打開策も実働可能なファクターを入れて提示できる。
NBCR対策推進機構:その後、筆者はこの機構の特別顧問となり、日本医師会や自衛隊幹部と長年地道な活動を共にすることになった。日本医師会の支援、消防・自衛隊・地方自治体の理解と協力で全国の医師を対象に治療法教育で成果を上げた。日本における防災センターが不可欠だと判断したのは、この活動から得た教訓からであった。すなわち、折しも東京五輪パラを目前に、日本は保健所・警察・自衛隊・医師団・消防がコロナと闘いながら各領域ごとに努力するけれども、いまだに領域をまたぐ連係プレイが出来てないまま五輪開催に突入するわけである。
提案⑴:堺市東区は国も認める危機管理機構として「世界防災センター」を開設しよう
「世界防災センター」を東区に開設し、①国の防災機構と直結して情報収集と「防災士」教育を行う。②bio-, chemi-, nuc-, radio- 対応の最新知識教育。医師・看護師の最新教育。③WHO(世界保健機構)、ユニセフ(unicef、公益財団法人日本ユニセフ協会)、国連安全保障理事会とのドッキング。もちろん、区議会、市議会、国会、国連、各国大使館や研究機関とのパイプも構築する。筆者はNBCRと並行して、青山学院大学では長年公官庁館員のリカレント教育を担ってきたが、このセンターは国庫援助でカリキュラム化し修得単位を普遍化させる。
提案⑵:Civilian Controlはつねに財政支援政治と行政の協力がなければ結実できない。予算を順当にもらい、消化して市民のためになる住民主導型組織の運営で実効を上げよう
民主主義国家におけるcivilian control は19世紀末のアメリカで台頭したindustrialization(産業主義)で本格化しました。discretion(自由裁量)を最大限に。但しdiscretionary zone(自由裁量の権限範囲)の規定なし。それでも産業主義が統制型の国家主義より繁栄したのは、市民の着想が繁栄に結びついて欧州経済圏を凌駕できた。我が国の公共機関においては、とかく管理第一主義になるか特殊法人のように全面的に任せた結果資金管理不能となった。コントロールに必要な方式は、法人化させた上でdiscretionary zoneを決め、次々と出る企画の損益分岐点を診て、さらにzoning(権限範囲)を拡大させ予算組に反映させる方式がよい。市民と行政の人事比率は7対3と決め、以上を「東区方式」として堺市のパワーアップに役立ててほしい。(以上)
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