たいせつなもの  高鳥奈緒   2023.12.9
 
たいせつなもの 壊した
たいせつなもの 壊れた
たいせつなお皿を、床に落とした
割れて粉々に散ったから
割れたお皿の破片をひとつひとつ
泣きながら拾った
 
破片に指が傷ついたよ
指先に赤い血が滲んでぽたぽたと
床に落ちたのを見てはっとした
傷ついた指先よりも
心は痛かった
 
そういえば最近泣いたことなかった
何もかも我慢して耐えていたのかも
感情的はみっともないことかな
 
 
だけど指先は痛いよ 
じんじんしてきたから泣いた
我慢していたから
涙がたまっていたみたい
 
落とした皿で傷ついたけれど
ほんとうに傷ついたのは
落とされたお皿の方なのかも
お皿もわたしも傷ついた
それがわかった
 
優しさってなんだろう
ほんとうの優しさって・・・
わたしのたいせつなもの
割れたお皿を眺めてそう思ったわたしがいた
ごきげん  高鳥奈緒   2023.12.3
 
私のごきげんは
あなた次第なのよ
あなたの些細な態度や言葉は
わたしを変えてしまう
 
ちょっと優しくされて
ニヤニヤ ルンルン
 
ちょっと冷たくされると
モヤモヤ ツンツン
 
振り返ると単純なわたし
それだけ大切な人なのね
あなたって
 
いつも二人笑顔でいたいから
これからもずっと
ごきげんでいさせてね
古風な女です  高鳥奈緒   2023.12.7
 
わたし意外と古風な女です
夜なべして手袋を編んでいます
もう直ぐあなたのお誕生日ね
あなたは知らないから驚く顔が見たいのよ
一針、二針と進める指先は
想いを込めながら優しい記憶に浸る深夜
どうか届いて欲しい
 
わたし意外と古風な女です
あなた色の毛糸は癒しの色
編みあがったらその手荒れした大きな手を
この手袋で温めてあげたいの
心はもつれた毛糸玉
うまく伝えたいから
はやる気持ちを落ち着かせて

 
 
もう直ぐあなたのお誕生日
「奈緒から・・・お誕生日おめでとう!」
後ろ手に隠した包みは手編みの手
「わたし意外と古風な女です・・・」
そういって手渡した手編みの手袋
ふと見た彼の手には既に素敵な革の手袋が
マフラーにすればよかったかな
 
悲しい恋の結末ね
古風な女は不器用な女
あなたは苦笑いで優しいわ
言葉じゃ伝えきれないから
不器用なわたしは毛糸と悪戦苦闘
愛は人を変えてしまうのね
こんな自分に戸惑うばかり
夕暮れのひと  北見薫   2023.12.7
 
夕暮れのひとは物静かでナイーブなひと
ガードレール脇を寄り添い歩いた映画の帰り道
高架下のバス停で君とバスを待つ
行き交う車の騒音は二人を無口にしたね
楽しい時間はあっという間
「帰り道は寂しくなるね」と君は呟いたね
それは夕暮れのせいかなと僕は思ったけれど
君の悲しげな横顔が目に焼き付いて離れない
今なら君を離しはしないのに
君の悲しみ僕が受け取れたらよかった
君は何を抱えていたのだろう
僕は鈍感だった、気づかずにゴメン
二度と会えないならきつく抱きしめた
今でも僕の心には君の影を落としている
明日は永遠に続くと信じて疑わなかった
今もこのバス停に君が待っていそうで
僕は一人、夕暮れに立ちつくす
そんな寂しさこみ上げる
夕暮れのひと
孤独なウサギと暮らす女  高鳥奈緒   2023.12.4
 
女は夢を見たけれど
今もひとりぼっち
寄り添う相手は孤独なウサギ
 
今宵もウサギと共に
狭い部屋の中
 
孤独なウサギと暮らす女は
怖がり臆病だから
月を眺めて想像の夢を見る
 
愛した人はもういない
ほんとうは幸せが欲しいのに
 
年の瀬に賑わう街に出ると
孤独をより一層浮き彫りにするから
狭い部屋の中
 
 
ひとりの夜は長いけれど
月夜に乾杯、年が明ける
孤独なウサギと暮らす女は
果てしない 果てしない
勝手に夢を見る
 
そんな孤独なウサギと女の物語