悲しみの亡霊さん  高鳥奈緒   2023.8.19
 
悲しい理由がみつからないのに
心が泣いている
瞳もいっしょに泣き出したら
なぜだか少し解かりかけた。
この悲しみは過去たちの亡霊なんだ
私を過去たちの真ん中において
ひそひそと耳元で
囁く亡霊さん。
 
悲しくないよと心が叫んでも
ひたひたひた
亡霊さんが忍び寄って
悲しい気持ちを喉の奥から
引っ張り出して私を見つめる。
去って行ったあの人の眼だ、それは、
もしかして、あの人、もう亡霊さんに…。
新しい私  高鳥奈緒   2023.8.17
 
新しい朝を迎えるように
新しい私が今日も生まれるの。
 
昨日までの事は全て過去だから
いつかそっと想い出せばいいの。
 
過去に執着している時間はない
だって時は待ってくれないもの。
 
毎朝、私は変わるの
そう携帯をアップデートするみたいに
最新の自分にステップアップだ。
 
気になる人は誰で
気になる色は何色かしら
気になる曲は意外と古いものだけど。
見るもの全てが新鮮な輝きを放って
どんどん眩しく変わっていく
時よ、物たちよ、これから私をどう変える?
どんな小径を切り拓くの?
 
歩き出した私に、みんながHi!
昨日までの私に So long.
そして私は今日という生き物の耳元で囁くの、
You’re not my first lover but you’re my last!
夏の通り雨  北見 薫   2023.8.7
 
心潤こころうるおしてくれ。
この枯渇した心の渇きを
俺を満たす夏の通り雨様よ。
雨空に向けてつらを向けてると、
大粒の雨が痛い。
俺はそいつに混ぜて
涙ぼろぼろ。
 
俺みたいに悲哀に満ちた運命でも
雨は容赦しない。心を癒さないから
その荒っぽさがいい
心穏やかに居たいなんて思うもんか。
 
街路樹は百日紅さるすべりのピンクで満開
華やかさで俺の心を揺さぶりよる。
気がついたら、さっきまでの通り雨はやんで
白い雲が手前勝手に流れてやがる。
あの雨粒を何処へ運んでいく気だ
俺の心をもてあそびやがって。
ともだち  高鳥奈緒   2023.8.10
 
ほんとうに辛い時に
はじめて気がついたの
周りにいる友達という存在が
何よりもわたしを慰める
 
自分の時間も惜しまずに
寄り添ってくれるあなた
あたたかな居場所を見つけて
こんな情けない自分なのに
 
だがら友より強くならねば
今度はわたしが友を励ませる番だから
さりげなく大切なことを
教えて上げるわ、友達に。でも友達さん、
あなた、どこへ行くの?
行かないで! 私は行かないから、あなたも去っていかないで。
情けない奴  高鳥奈緒   2023.8.3
 
混濁した意識の中で
目覚めると
いつもの病院の天井
ああ、生きてる
生きてしまった
情けない奴だよ、わたしって。
 
足元に誰かいる? あ、看護師さん
私が意識を戻したこと、喜んでくれてる、連絡の眼が輝いて
私はオムツ替えの最中だった
手を縛られたベットの上で
数日間、
意識不明だったわけね
 
自分のしたこと、少しずつ思い出す
生き恥をさらして愚か者めが
知らない誰かに迷惑をかけ
救われた情けない奴だった…
看護師さん、有難う…
あふれる涙
堪えきれない…
追いつかない心で
生かされた意味を考える
情けない奴なのに、その心に詩の文句が次々分け入ってくる…