幸せの風船  高鳥奈緒   2023.7.8
 
街で見かける恋人や家族たち
みんな幸せそうに微笑む
昨日までの私もきっとそうだった
いつも、普通の幸せが欲しいだけなのに
わたしの幸せの風船
また放してしまった
 
空高く飛んで小さくなって消えた
なすすべもなく立ち尽くす私
虚しくて心は空っぽ
あるのは、この手に残された感触だけ
忘れないその指の感覚
またひとりぼっち
愛の変形  高鳥奈緒   2023.7.8
 
いとおしいひとよ
これで楽になったのかな
あなたの出した答え
まだ納得できない
だって一方的だったから
 
苦しみを手放して
苦しみが消えたおつもりなの
受けた私はもっと苦しい
きれいごと言わないで
カッコつけないでよ
罪だわ残酷よ、そんな愛の変形は
 
卑怯よ、みっともない卑怯者よ
そうは思えど、まだ貴方を憎み切れない
すべてを犠牲にした私には
貴方を失ったいま
もうなにも失うものはない
 
残されたものは
置き去りにされたこの想いだけ
夏が始まる蝉の脱け殻
からっぽなのに心が疼く
想い出がいっぱいで歩けない
本当の貴方ってなんなの
このいとおしさをどうすればいいの
雨宿り  高鳥奈緒   2023.7.7
 
突然の落雷に驚いた夏の夕立
下校途中の土砂降りに
傘もなくて慌てて軒下に
偶然あなたと二人
濡れたワイシャツ
とっさにあなたが差し出したハンカチ
ありがとうと御礼言って拭うわたし
 
あなたは自転車を端に寄せて
二人して困った空を見上げていた
気まずく時間が流れていく雨宿り
胸の鼓動を感じて恋した夏の到来
段々と雨が弱まって
見上げた空には虹がかかった
これから二人の夏が始まる予感
檸檬の恋人  高鳥奈緒   2023.7.7
 
一度きりの檸檬の恋人
赤レンガでデートした
恋に恋しただけの檸檬の恋人
 
こんな気持ちずっと忘れていたの
甘くてほろ苦い恋は檸檬味の恋
淡くて透き通ったビー玉みたいな恋
 
コロコロ弾んで転がった
遠くにベイブリッジの白いライン
空と海の青さに爽やかな風が吹く
 
この瞬間あなたに背伸びして
頬にキッスしたけれど・・・
檸檬の恋人は私の思い出の中
見えない愛  高鳥奈緒   2023.7.2
 
お互いに見えなくなった
想いはあるのに
近すぎて見えなくなった愛
ふたりの距離がわからなくてもがいた
大切なものは何だろう
少しずつ離れていったふたりの愛
偶然がもたらした必然のように
 
お互いに大切にしたい気持ちは置き去りに
答えが出る日までのサヨウナラと受け止めたい
失いたくないあなた
失いたくない今を
そのエゴと傲慢の執着を手放して
あなたを愛してやまない
わたしの愛し方
本当はサヨナラなんて言えない
きれいごとじゃないもの
あなたを失ってしまって何も味気ない日常
まるでモノクロ映画のように
本当に孤独になったわたし
 
恨みも呪いも迷いもなくて
わが身を裂く想いは
そっと時の流れに委ねたい
きっとあなたも苦しみのさなか
あなたのお幸せを祈りつつ
ふたりが出逢った日のように
またこの地球上で再び出逢う奇跡を信じて